子どもが体調を崩した日。
本当はそばにいてあげたいけれど、どうしても仕事を休めない。
そんなときに利用する選択肢のひとつが病児保育です。
私は14年間、病児保育の現場で働いていました。
保育士としてたくさんのお子さんを受け入れ、多くの保護者の方と関わってきました。
病児保育がどんな場所なのか、私は知っていました。
子どもたちがどんなふうに過ごしているのかも見てきました。
そこで働く先生たちがどれだけ丁寧に子どもと関わっているのかも、現場で見てきました。
だから、「親として預けることになっても、安心して任せられる場所だな」とは感じていました。
でも実際は、そう簡単なものではありませんでした。
今日は、私が初めて我が子を病児保育に預けた日のことを書いてみようと思います。
初めて預けた朝のこと
その日、我が子は体調を崩していました。
本来であれば、私が勤務していた病児保育室に連れて行くこともできたのですが、その日は予約がいっぱいでした。
我が子とは別の病気のお子さんの予約で埋まっていて、受け入れが難しかったのです。
そこで、同じ市内にある別の病児保育室へ連絡をしました。
先生方とも面識があり、どんな雰囲気の施設かも知っていました。
だから私自身は、その場所に不安を感じていたわけではありませんでした。
でも、それは私の話です。
我が子にとっては初めての場所でした。
まだ保育園にもやっと慣れてきたかな、という頃。
体調も良くありません。
案の定、預けるときには泣きました。
先生方とは顔見知りだったので、
「すみませーん。今日一日お願いします。」
と、できるだけ普段通りに預けました。
でも心の中は全然普段通りではありませんでした。
「ごめんね」
その気持ちでいっぱいでした。
後ろから泣き声が聞こえていましたが、そのまま仕事へ向かいました。
出勤時間もあり、ゆっくり気持ちを整理する余裕もありませんでした。
仕事へ向かう車の中では、もう一仕事終えたあとのような気分だったのを覚えています。
働いていた頃には見えていなかったこと
病児保育で働いていた頃、預けるときに申し訳なさそうな顔をする保護者の方をたくさん見てきました。
「すみません」
「本当は休みたいんですけど……」
そんな言葉を聞くこともありました。
その頃の私は、
「体調を崩したお子さんと離れることがつらいんだろうな」と思っていました。
でも自分が親になってみると、本当にその通りだったなと思います。
病児保育を信頼していないわけではありませんでした。
先生たちを信頼していないわけでもありませんでした。
ただ、病気の我が子を預けて仕事へ向かうことがつらかったのです。
病児保育が安心できる場所かどうかと、
預けることがつらいかどうかは、
まったく別の話でした。
私は親になって初めて、そのことを実感しました。
お迎えのあと、何度も「ごめんね」と言った
仕事が終わり、お迎えに行きました。
先生から一日の様子を聞くと、思っていたより落ち着いて過ごせていたようでした。
その話を聞いて少し安心したのを覚えています。
お迎えのとき、私は先生の前では「ごめんね」とは言いませんでした。
一日見ていただいたのに、
「こんな場所に預けてごめんね」
と言っているように聞こえたら申し訳ない気がしたからです。
でも病児保育室を出たあと、
私は何度も子どもに声をかけていました。
「ごめんね」
「ありがとうね」
「頑張ったね」
「えらかったね」
何回言ったのか覚えていません。
それくらい、その日は胸がいっぱいでした。
今振り返って思うこと
病児保育に預けるとき、
罪悪感がまったくなかったかと聞かれたら、そんなことはありません。
病児保育がどんな場所なのか知っていても、
先生たちを信頼していても、
やっぱりつらいものはつらい。
親になってから、そのことがよく分かりました。
だから今、
「病児保育に預けるのがつらい」
「かわいそうなことをしているのかな」
と悩んでいる方がいたら、
その気持ちはとても自然なものだと思います。
私自身、病児保育の現場を知っていてもそうだったのですから。
あの日の私も、「これでよかったのかな」と思いながら帰っていました。
そして、どれだけ安心できる場所だと分かっていても、
「ごめんね」という気持ちがなくなることはないんだろうなと、改めて思いました。
あの日のことは、今でもふとしたときに思い出します。

